次男坊 :よろしくお願いします。早速ですが、幼い頃のパンとの関わりについて教えてください。
青木さん :もともと家がパン食で、父親が勤め人で出張から帰ってくるといつもパンを買ってきてくれた。
次男坊 :その当時はパン食は多かったんですか?
青木さん :その当時はパンなんて田舎では買えるお店は無かったからなかなか手軽には手に入らなかったし、住んでいた村のほとんどは農家だったから朝食でパンを食べる家はほとんどなかった。そして親戚が問屋をやっていて、バターやジャムも身近に手に入る環境にあったからそれも家がパンを食べるキッカケになってる。
次男坊 :その他に食に関して子供の頃、印象に残っていることは?
青木さん :村の裕福な家にはテレビがいち早く入ってたから遊びに行くと普段は芋蒸かしや柿とかがおやつとして出てたんだけど、その家ではビスケットが出てきてね。それが衝撃だった。
次男坊 :確かに。興奮しますね。
青木さん :興奮するよね。
次男坊 :いつも芋蒸かしを食べていた子供にとって急にビスケットが出てきたらビックリですね。
青木さん :でもね、当時は芋蒸かしも食べてたけど母親がよくパンケーキを焼いてくれて。といっても小麦粉に脱脂粉乳(牛乳なんてないから)や卵などを混ぜて焼くんだけど…。今考えると小麦粉の食物には昔からなじみがあった。
次男坊 :そうやって今のパン作りに幼少期の影響も少なからずありますか?
青木さん :パンを作って特に自分で食べるときに思うんだけど
やっぱりあの頃の味を思い出す。だから作るパンはそれに近いものが常に再現されている。
次男坊 :それは意識的にそういうパンになったんでしょうか?
青木さん :んー…特に意識してではないけど俺がナチュラルフーズを作っていてあの頃の味が“もと”になっているのは確かだ。厳密に昔のパンと今のパンを比べたら違うかもしれないけど
記憶の中では妙に一致するんだよね。
次男坊 :じゃあ幼少期に出会ったパンは無意識にでも青木さんのパン作りに影響を与えていますね。
青木さん :パンとして親しみを覚える馴れ初めは幼少期のパン食の影響が大きいのは確かだね。
次男坊 :青木さんはどんな子供でした?
青木さん :性格はナイーブ。あとはとにかく工作少年。おもちゃはほとんど作っていた。おもちゃはたまには買ってもらえるけど、そんなに欲しいだけ買ってもらえないから木でいろいろ作っていた。例えば鉄砲のおもちゃなんて見かけは本物に似せているけど、実際は子供だましでぜんぜん飛ばなくて面白くないのよ。
だから威力があって遠くまで飛ばせるものを木で作ったりした。
次男坊 :なんだか子供ながらにストイック。というか子供離れしてますね。
青木さん :とにかく凝った工作。大人が関心するようなものを当時はよく作っていた。
次男坊 :じゃあ大人になっても変わってない部分て創作意欲ですね。
青木さん :そうだね。畑に風車を立ち上げたんだけど見た?
次男坊 :すいません…、ブログで見ました…。あれも作ったんですよね?
青木さん :ああいうのを作る精神性というか魂は子供の頃から全く変わってない。やるんだったら創意工夫、またその工夫がうまくハマるとおもしろいよね。それはパンを焼いても同じことだよね。
次男坊 :パンを作るきっかけになったのをお聞きしたいんですけどそもそもなぜパンなんですか?
青木さん :なんかパンてステキじゃない?もともと自然食品の販売をしてる頃から天然酵母(※1)のパンは作っていて、その前にイースト(※2)のパンだったら20代でかなり作ってるんだ。『パン』てあだ名が付いていたくらい。
次男坊 :パン!?ほんとですか!?売ったりもしてたんですか?
青木さん :思い出深いのがイベントで甘食パンを150個売ってね。そのパン屋の看板もパンで作ったりした懲りようで。
次男坊 :パンで看板を作るなんてステキですね。
青木さん :それがウケてさ。その時のパンはね、ほんのり甘さがあるパン。だから過去を振り返るといろんな場面でパンとは何かと関わりがある。当時から料理も好きだったし、何よりパンを食べるのが好きなんだ。それは今も変わらない。
次男坊 :じゃあ若い頃から食べ物は自分で作ったりしてたんですか?
青木さん :上京したときから外食をしたという記憶はなかった。ほとんど自炊していた。米も5分づき精米にしてもらって なるだけ栄養価の高いものを食べていた。自分も若かったから米屋もビックリしていた。『5分づきなんて、あんためずらしいね』なんて(笑)
次男坊 :ほんとですね(笑)その当時から食のスタイルは変わらないんですね。
次男坊 :山都にパン屋として店を構えて何か良かった点はありますか?
青木さん :ここの前は川内村に14年いて、そこでは天然酵母のパンとお菓子を作って売っていた。それでひょんなことから山都に拠点を移し、ちょうど同時期にパン屋を廃業した人に運よく設備を譲ってもらったり、その設備が置けるだけの場所も見つかったり。いろいろ条件がうまく噛み合って本格的にパン屋として
起業することになったんだけど…。それで山都に来てみて良かったことは飯豊産の伏流水。酵母にはとてもいい。パンに水はとても大切だから。
次男坊 :ここ10年くらいで、パン屋から見て家庭でのパン食は昔に比べどのように変わったと思いますか?
青木さん :まず自分で売ってるパンは市販で売ってるものと比べてだいぶ違うという事は自覚していて、市販のパンがどんなパンなのか正確には把握していないのである程度分かる範囲で言わせてもらうけど。
次男坊 :はい、よろしくお願いします。
青木さん :ある意味でパンは二極化している部分がある。限りなく柔らかいパンと頑固で骨のあるパン、つまり本物志向のパンとの二極化。どちらも選べる時代になった。具体的に市販の柔らかい食パンに関して言うとパンは本来焼くものであって焼けば皮は硬くなる。そういう硬さや香ばしさがある…それがパンだ。
でも柔らかいパンには皮の硬さがなく、全てが柔らかい。その他にも生クリームやバターや牛乳を入れて食感や柔らかさ、もっちり感、さらには甘みを出す食パンも多く見られるようになった。
一方で我々が作るパンはハードで本来の酵母のおいしさ、そして本来の穀物の味を求めるパン。このように言い方は悪いけど、食感と味で人の舌を甘やかすような柔らかいパンとパンのルーツに帰る、いわば本来のナチュラルなパンとの両極端に分かれていて
その中間がなくなったように思う。
次男坊 :でもボクらの世代はきっとパンは柔らかいという認識の方が強いです。
青木さん :それはパンの中の一つの側面でしか知らないって事なんだよ。
次男坊 :なるほど。
青木さん :だから我々のようなパンを焼いて売ることはある意味で啓蒙、教育するって事でもある。昔のパンは本来こういうものなんだよ、穀物というものを粉に挽いてパンというものにして焼くとこういうものが出来るんだよ、というのを伝えていく。もちろん身体にもいいということも。それを伝えていくことが今とても大切な仕事の一つになっている。
次男坊 :やはり大切なことは青木さんのいう“昔のパン”つまり“本来のパン”を食べてみんなが健康であることですね。
青木さん :本来身体にいいものを美味しいと感じる味覚があったはずなんだけど、さっきも言ったけど人の舌は甘やかされ悪い嗜好を身につけてしまった。お菓子の甘さや柔らかさは歯止めがない。とにかく人の健康を裏切るものは作りたくないんだ。例えば、ただ甘いだけのお菓子って食べても食べても満足しないと思わない?
次男坊 :そうですね。たしかにただ甘いだけのお菓子って飽きます。
青木さん :本来『甘さ』はその中に味わいや香りがあって、さらに食感に特徴があったりすればある量を食べて満足感が生まれるはず。だから次から次へと手が伸びることはない。ただ甘いだけのお菓子って満足感がないからどんどん食べちゃう。それで次第に身体がおかしくなっていく。
次男坊 :それは怖いですね。
青木さん :食べ物って、身体をつくり、活動するためのもの。
それはつまり健康に動けるって事。そこが揺らぐ食べ物だったり
食べ続けたら身体を壊すようなものを美味しいってなるのは大変困ったことだよね。
次男坊 :自分も子供が出来てお菓子を作るようになったんですが、砂糖の量にびっくり!こんなに使うの?って感じで。作ることに意味を持たしてたんですがこれは中身から変えていかないとヤバイなと考えていました。改めて話を聞いて考えさせられました。でもやはり作ってわかることは多いです。
青木さん :そうだね、作ってみてわかることは多い。話は変わるけど、人って子供のときに何を食べさせたかでその人が決まる。特に甘いものって人間は抵抗ないから赤ちゃんなんてどんどん食べちゃう。だから逆に親がブレーキ掛けてあげないと駄目なんだ。それで甘さの基準なんだけど“母乳の甘さ”がいい。
次男坊 :母乳の甘さ?へぇ~。
青木さん :母乳を一度舐めてその甘さの基準を親が持つことが大事。そして母乳より甘いものはなるだけやらないようにする。
そうやって味覚を育てていく。
次男坊 :なるほど。おもしろいですね。あっ、青木さん、大変申し訳ないんですけど、今日中身が濃すぎて時間が無くなっちゃいました(笑)聞きたいことまだありまして…。それでお願いなんですが次回もお付き合いください。
青木さん :いいよ。
という事で、半ば強引に青木さんとのお話は次回に続くことになりました。
『天然酵母』 ※1) まずパンは小麦粉と水をこね、炭酸ガスを含ませることにより、ふっくらと焼き上がる。この炭酸ガスをさせるのに必要なのが酵母であり、パンには必要不可欠なもの。ここでの天然酵母とは天然の原料(果実や果物、根菜類)だけで作った酵母菌で、そこにはいろいろな種類の酵母が混在していて、それぞれの酵母の出すアルコールと、もともと付着していた果実や穀物のフレーバーがパンに独自の味と香りの“個性”を付ける。しかし、温度管理が難しく、手間と時間がかかる。発酵力が弱く、培養される酵母菌数も一定でないこともあり、パン作りに使うと失敗することも多いためには知識や経験がいる。
『イースト』※2) パンの風味や特性にあった単種の酵母(微生物)を工業的に純粋培養したもの。パンに使われているイーストは生イーストとドライイーストの2つがある。ドライイーストは手に入れやすく、短時間で発酵し、作業もスムーズに進むため、自家製のパンづくりには便利。(※酵母=イーストであり自然界に存在する酵母であることに違いはない。ここでは分かりやすくするため天然酵母以外のものをイーストと呼んでいる)
(タカハシ調べ)
食工房は皆さまの食生活にささやかな喜びを差し上げることを
目指しています。
天然酵母パンと焼き菓子の製造販売以外にコーヒー豆の自家焙煎とスパイスワークも手がけています。
まずは皆さまの健康づくりのお役に立てるしっかりと食べ応えのある食事パン、思わずお顔がほころぶお楽しみ菓子パン、贈り物としても喜んでいただける焼き菓子…各種を毎日心を込めて焼いておりますのでぜひお試しください。
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